ポピーの輝き
幼なじみの友の芸術への芽生えをずっと見守ってきたという実感がある。
カナ子ちゃんは家が近かったこともあり、母親同士が親しかったし、ピアノの先生がずっとおなじだったので、結婚するまで交流が続いていた。
女子大の付属で学校も一緒だったが、彼女は国文学を専攻したのだけれど、結婚後、子育ての手が離れたころから木版を始めたということは、展示会の案内をもらって初めて知った。
木版界の長老と言われる船坂芳助氏に師事するグループに属していて、注目される存在になっていたのである。
CWAJの現代版画展に入選することは今や、版画家として世に認められる登竜門とさえ言われるようになっているが、カナ子ちゃんはもう二十年以上前から入選を果たしている。
草花の好きな彼女がテーマをポピー絞ってからは、順調だった成長ぶりがちょっと中断して、作品に迷いが見られ、花の表情が怖いようなときがあったと記憶している。
この数年CWAJの入選は確実になって、昨年のポピーの花はもう明確にある境地に到達したという華やかで独特の魅力を放つものになっていた。
版画展での彼女の作品はすべての枚数を売り切り、カード化された製品も売り切れとなって海外からも注文が寄せられたと聞いた。
今年も彼女の新しいポピー作品は入選、すでにポストカードの一枚目を飾っている。
第62回CWAJ現代版画展(展示、即売)は現在代官山のヒルサイドフォーラムで11月4日まで開かれているが、体調が回復したので、きょう、友人と訪れ、彼女のポピーをこの目で確認した。60x90の大型作品、ポピーの花は一段とあざやかに、華やかに輝いていた。
昼食を終えて、ボランティアの仕事も一段落したとき、今回の運営に携わる主要メンバーがわざわざ私を呼び止め、カナ子ちゃんが探していると知らせてくれ、私たちは一年ぶりの再会を果たした。
彼女の師の船坂先生が日本の伝統である木版の技術を伝える作家の活躍を望むというその期待が現実となった喜びをCWAJの在籍年数の最古参のメンバーの一人として、こころから共有するものである。
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