夫の遺影
十年ぐらいまえの野球部のユニフォーム姿である。本人が喜んで着ている姿だからか、良く似合っている。
少し笑みを含んでいるような顔。わたしが外出から戻ってくるとまず目がいく。お帰り、と笑顔になっているのがわかる。
彼の眼は最後まではっきりしていた。酸素吸入していたときも、もう半分くらい向こうに行き掛けていたのに、目だけは、しっかり何かを見つめていた。そんなに苦しそうに息をしないで、いやだったら、やめていいのに、真面目なのだ、それがつらい。病院で決められたことを、しっかりしていこうというのはまじめな証拠だ。どこにいっても、困らせる患者ではなかった。それがつらかった。
もうすぐ四十九日の法要がある。一日五十万と言う値段に驚いたが、それに見合う生命保険がきちんとかけられていた。ここしばらくは保険と死の直前にもらった二か月分の年金でやっていける。
ありがとう、あなた。
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