夫のショートステイ
ショートステイ実現までの手順はかなり面倒であった。健康診断書をととのえるのも、ホーム側が必要としている項目が、夫が受けた項目には欠けていて、近くに医院で昨年受けたものを補ってもらわなければならず、私がまた出向くことになり、そういう細かい手間がかかることが疲れを増した。書類の書き込みも半端なく詳細を極めていて、一日に行動することを、どれほど自分でやれるか、書き入れなければならない。朝起きて顔をあらうときに手助けがいるかとか、着替えはどうか、とか…だとか、排泄のときの手助けは?とか、結果、夫はほとんどを「自分で」していることがわかり、90歳でこれほどは立派だと、ほめてみたりしたが、聞こえていたかどうか、わからない。
ステイの場所は今回、有料ホームのショートステイが来年の一月まで割引になっていて、一泊5500円という破格の値段なので、幸い義姉が最後ホスピスに入るまで入居していた場所には私たち二人が何度も通って助力したこともあるので、あそこなら、知っているだけで「慣れ」が短縮できると思って、決めたのだった。
書類提出が終わってからも、あと、一週間の朝晩の体温を書き入れなければならず、前日までずっと36度台だったのに、前々日になって37度を越したときは、もしや?でパニックになりそうになった。娘がコロナは37度から始まってどんどん上がるというから、もう覚悟して熱さましを用意しておいた方がいいと言って、夜届けてくれたりした。
最近コロナ経験をした若い友人からはもしものためにと、検査のできる場所とか、ファーマシーなどの電話番号とかをメールしてくれたり、という親切も頂戴した。
そして最後の日、早朝体温は再び36度台に戻ったときのうれしさ、安堵は大きかった。
出発の日は月曜だったが、タクシーの予約も簡単ではなかった。地元のタクシー会社は最近、予約がとてもむずかしくなっている。高齢者の利用が増えに増えているというか、一週間まえでも、もう、月曜の午前中はまず無理というときが多い。我が家はそれを想像して、息子に「GO」というアプリから予約してもらった。一体どんな車が来るのかと思ったら、なんと日本交通のきちんとした一台で、こういうところも、参加しているのだな、とわかった。
夫を施設に残し、一人家に帰ったときは、正直、ほっとした。この日はだれのことも考えないでいい、ただ、自分ひとりのことだけ考えればいい一日、それはやはり、旅行も行かずにいた二年半ぶりの、完全な自由で、正直、何とも言えぬ解放感に、メニエールや難聴への不安も消し飛び、キッチン仕事が少しもいやでなく、鼻歌などを歌いながら、過ごした夜でもあった。
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