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2022年8月21日 (日)

夫の卒寿

夫の誕生日、90歳の卒寿の祝いが終わった。

 かなりハードな仕事をしている娘、息子、孫たち、一同に集うことがむずかしい、ましてやこのコロナ禍の最中、夫は認知症ではなく、聴力が落ちているだけで、彼の目を見ながら話せば、すべて通じるけれど、歩幅が三十センチぐらい、杖二本でやっと歩けるぐらいなので、外出がむずかしく、食も細いし、外食をきらう。

 何を一番喜んでくれるか、と考え、車の運転をやめたときに皆で送った色紙に感激し、いまでも時々眺めているので、また、寄せ書きを送ることにしたら、と提案した。短くていいから、彼にしてもらったことで忘れられないエピソードを三つくらい、できるだけ具体的に書いてほしい、これが恐らく、正常なじぃじとかわせる最後のけじめの祝いになるかもしれないから、と子供、孫の四人に伝えた。

 誕生日の前日、娘が訪れた。今回の色紙は三つ折り、リボンで結ぶようになっていて、デザインは前回と同じ、孫娘が担当し、花々のイラストをちりばめ、選りすぐった夫の写真を切り抜いたもの正面に張り付けてあり、両側に花に囲まれて五個の窓がひらいていて、すでに、三つのメッセージが書かれていた。あとは息子とわたしが書けば完成する。

 二人の孫は父親代わりをつとめたじぃじを讃えていた。受験勉強を辛抱強く優しく指導してくれたこと、サイクリングに連れだしてくれたこと、キャッチボールにつきあってくれたこと、早起きしてワールドホビーフェアにドライブしてくれたことなど、など…

息子は近頃夫と口をきかなくなったが、コロナで大変な時だけれど、身体に気を付けて元気でいてください、と書いていた。わたしは五十数年前、アメリカ駐在時代、最初のドライブ大旅行、あの岸壁に四人の大統領の顔が刻まれている、ラシュモアの旅行の写真を付け加えて、沢山の旅行の思い出があるから、帰国後の苦労を耐え抜くことができたと感謝を述べた。

 娘はめずらしく、そそくさとは帰らず、家事に疲労困憊する私の愚痴をきいてくれた。ちょっとご飯食べさせて、と言って、コンビニで買ったというきしめんを手早くつくってほおばった。近頃あんなにおいしそうにコンビニ食をほおばる姿を見たことがない。今の彼女は健康なのだ、とちょっと安心した。部屋が片付かないとこぼしてみたのだが、「きれいにしてる、うちより、ずっとまし」とほめてくれたので、うれしくなった。

ずっと、なにか、娘に褒めてもらいたかったのだと、つくづく思った。「窓から見える風景がすべて癒し空間になってるみたいでスゴイ」とも言ってくれた。

 当日はちょっと出かけて、自由が丘の駅中、スープストックのカレーを二人分、田園調布の小さなケーキ店で、イチゴショートケーキを二個、夫の名前の入っているチョコレートプレートをつけてもらって、タクシーで帰る。

 夫は色紙を開いて読み、涙ぐんだ顔をあげ、「宝物だ」と言った。

 その日を祝福するように、ひいきのDeNAベイスターズがなんと14連勝、シーズン初めはビリ確定かと思ったのに、奇跡が起きつつある。

 

 

 

 

 

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コメント

ご主人の卒寿、おめでとうございます。
ご健在で何より。残りの人生いい時間を送られますように。

ご主人様の卒寿 おめでとうございます。
いいおじいちゃまでいらっしゃるのですね。お孫さんたちにも慕われてお幸せなご様子、こちらも嬉しくなりました。
続く日々も穏やかでありますようお祈りいたします。

いいお話を伺えました。ご主人様、お幸せですね。ご家族の皆様がお幸せでありますように。

ご主人様の卒寿おめでとうございます!
お子様やお孫様からの色紙、すばらしい贈り物ですね。何よりも嬉しい本当の「宝物」
です!ばあば様のアイデアの賜物ですね。そして娘様からのねぎらいの言葉がばあば様にとっての最高の言葉です。いくつになっても誉め言葉は嬉しいですね。どうぞお元気で。

mochakoさま、ykさま、kikukoさま、aiaiさま
ありがとうございました。
皆さまにいただいたありがたいお言葉を励みにしながら、これからを生き抜こうと思います。
思い返しますと、義父は今のわたくしの歳で、亡くなり、その時、義母は74歳で、それから二十年後に亡くなりました。
私の今の年齢のときに、お義母さまは、と言いだすと、夫は必ず不機嫌になります。
老いがますます迫る私たち、毎日食べるものを大切に、何とか、健康を保たなければなりません。
ブログを続けてこられたのは、読んでくださる方があってこその、励み、ありがたいことだと感謝の毎日です。

卒寿、おめでとうございます。
漢字で書けば2文字ですが、その人生の持つ重さと意義は本当に素晴らしいですね。
90年間国内外に家族と一緒の動線を残して、本当に偉大というよりほかはありません。

最後のご主人様の涙に思わずもらい泣きしました。
最高の祝い方になりましたね。
私も参考にしたいと思います。

ブログというより、すがすがしいエッセイ。とても心温まるエッセイでした。

ちゃぐままさま
ご訪問、そして、胸にせまるお言葉の数々、ありがとうございます。
難聴の夫に、大きな声でやさしく言うむずかしさと闘っております。
ご馳走でいっぱいのあなたのブログを拝見するたびに、一汁一菜の簡単食を反省させられますが、手は抜かぬように、つとめるのがやっとの日々です。
いろいろ情報もいただきました。
杏さんは渡仏なさるようですね。お料理さっそく、クリックしてみます。
テレビより、YouTubeの方が面白いですね。
どうかお元気で、夏をのりきられますように。

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