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2021年12月19日 (日)

期待通りの「務川慧悟リサイタル」

ショパンコンクールのファイナルを前にして、反田恭平さんは応援に来ていた親友の務川慧悟さんに「レッスンしてください」と楽譜を差し出した。

一楽章を聴き終えて、務川さんは、非和声音を素通りしている、とか、「痛み」の音を聴きたい、とかイントネーションが逆だった、とかスゴイ批評をして、反田さんは「痛みか…」つぶやき、楽譜に書きこんだりしていた。わたしは、こんな鋭い耳をしているひとの演奏をモーレツ聴いてみたくなって、さっそく務川さんのネット検索をした。

18日のサントリー大ホールのリサイタル、すでにほぼ満席、やっと最後のチャンス二階てっぺんの最後尾に近い一席をゲット。きのう格別寒い日にもめげず、いそいそ出かけた。

山の頂上からふもとを見下ろすほど、てっぺんの席、立錐の余地もないほど満員の客席、オペラグラスを調節しながら、肝心の音はどうなのだろう、と不安になったが、そこはさすがサントリー、音響素晴らしく、客席で損をしている、とは感じなかった。それほどに、音が冴え、弾き手の実力が物を言っていたと言える。

第一曲、ドイツ民謡「スイスの少年」による変奏曲ホ長調は響かせるべき音がすべて、これ以上ないほど完璧に鳴らせているので、一瞬にして聴く者を取り込んでしまうほどの達意の演奏で、ロンドの美しい展開に惹き込まれる。

休憩前のプログラムのなかでも遺作のワルツホ短調、かつてピアノを習っていたときに弾いたことがあって、あまり好きな曲ではなかったのだが、まるで違う曲を聴いているように、展開が魅力的で、大曲はもちろんだけれど、こういう小曲で、ひとを酔わせてしまう彼の実力をつくづくと感じた。

そして、そしてラストのソナタ第三番、これほど見事なソナタはショパンコンクールでも聴かなかったような気がするほど、惹き込まれ、酔わされ、心を奪われ、完璧ショパンの美に涙があふれそうになった。

多くの聴衆が同じ感動を分かち合ったと思う。拍手の音で感じた。アンコールは意外にもおさらい会の一曲のようなシンプル極まりない小曲。演奏者の彼はマイクを持って語った。いまの「ダサい」一曲も実はショパンの晩年のブーレの一曲です、こういう曲も含めて自分はショパンを愛してやまない、せっかくあこがれの大ホールで弾くことができるのだから、ショパン以外も一曲弾きたい、と述べて、バッハのフランス組曲のサラバンドで締めくくった。

こういう締めで、あのソナタはより耳の奥に冴え残った。巧みな終わり方だったと思う。Photo_20211219172801

もう少しこの人の演奏を聴きたい、という望みが消えず、わたしは新年早々、埼玉の劇場まで出かけることにしている。

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コメント

ショパンコンクールファイナルに挑む前日に
親友の務川慧悟さんに練習を聴いてもらって
批評を仰ぐシーンですね。
私も情熱大陸で観て務川さんのことは
気になっていました。

反田さんが2位の快挙を成し遂げることが出来たのは
この務川さんとのレッスンが大きかったのではと
素人ながら思っています。

そんな務川さんの演奏を聴いてみたいがために
即行動に移す、そんなばぁばさまの行動力に只々拍手。
そしてどんなにすばらしいピアノ演奏だったのか
そして務川さんがどんな演奏家なのか
この短い文章を読んだだけで理解できます。

新年早々のお楽しみが出来ましたね。
またその演奏風景をここで拝見出来るのを
楽しみにしています。

あの情熱大陸の場面は、かなり印象に残るものでした。務川さんと反田さんは、日本音楽コンクールで、一位を同時受賞されていたのですね。お二人は、心許せる友という感じがします。務川さんの初サントリーホールリサイタル、期待以上の素晴らしい内容でした。会場で買い求めたCDを聴き、その中のバラード第一番が、殊の外胸を打つ音楽で、CDにもかかわらず胸に沁みました。解説も全部ご自分で書いていて、その内容も深く洞察力のあるものです。感じ入りました。ばあば様が埼玉まで出かけるお気持ちが分かります。

やまねこさま
ご同感うれしいです。
「情熱大陸」のあのシーン、撮影OKにした反田さんにも好感度増しました。
優秀なピアニストを輩出する我が国、本当に誇らしいです。

横山幸雄さんはショパンの未発表曲なども多く演奏されていて、あまりにも有名ですが、
辻井伸行さんのレッスンが公開されたときの、指導シーンが見事なのに驚きました。
あの情熱大陸の務川さんが似ているとおもったら、彼は横山さんの愛弟子らしいのです。
埼玉のコンサートではその二人ノデュオが聴けるのが楽しみです。

aiaiさま
曲の理解が深く、それが演奏からしみじみ伝わってきますね。
CD を買いそこねてしまったのですが、あなたのご感想を知り、どうしても欲しくなって、タワーレコードから注文しようかと思っていますが、彩の国芸術劇場でも買えるのではないかと期待したりもして、迷っております。
あのリサイタルの日は帰り、凍えるばかりに寒かったですけど、心は豊かそのものでした。

もう二度も務川さんのリサイタルに行かれたのですね。
私は19年だったかな、有料オンデマンドコンサートで反田さんとの2台のピアノを聴きました。二人は親友で、これだけの賞をとったピアニストの共演を実際に聞いてみたいものです。

YouTubeのチャンネル「CLASSICVIRUS」の中に『務川慧悟の紡ぐ世界』がPART1~4まであり、オンラインだから聞きづらいところもありますが、とても興味深く聞きました。

日本を代表するともいえるこの二人のピアニストが親友というのも素晴らしいですね。
反田さんはビジネスの才能もあり、ヴィジョンがしっかりしている音楽家ですから、務川さんの才能も安定していると言えるでしょう。
この二人をずっと応援したいです。

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