マツタケ騒動
先週の土曜日、アメリカの松茸です、という、小型の小包が配達された。
送り主は?と訊くと、なんと、私の名前なのである。私が私へ松茸を?!
これはおかしい。悪意のある詐欺かもしれない、それに今アメリカの郵便事情は予測不可能な疑問がいっぱいある。
送り主が納得いかない配達物は受け取りたくない、と配達人に言ったら、返したほうがいいですよ、と賛成してくれたので、それには安心したが、自分が何かの標的になっているような気がして、不安の黒雲が湧いてきた。
そのあと、日通フーズというところから、メールが届き、送り主をもう一度確かめてほしい、品物はそれがはっきりするまで預かっておくという文面だった。
日通フーズを検索すると、松茸の写真も出てきた。日本の松茸とはちょっと異なり、マッシュルームを大きくしたような白っぽいシロモノで、締め切り前に完売、という表示があった。
ともかく、検索を続け、日通商事をつきとめ電話する。時差があるので、二、三日お待ちください、ということで、不安をかかえたままその日が過ぎた。
一日おいて日通フーズから再びメールがあり、送り主がシアトルの従姉からだということがわかった。日通フーズの商品の写真を検索したときに、チェリーの写真があったので、毎年従姉から送られてくるのを思い出して、もしや?という疑問がよぎったのだったが、それなら電話か、メールの予告があるだろう、とその疑問を打ち消していたのだった。
さて、従妹に電話をしなければならない。それが問題だった。90歳になる彼女、先回も一方的に電話してきて、入院していたけれど、元気になったからとしゃべりまくった電話だった。こちらは体調がわるいのに、元気?とも訊きもしない。ともかくもう六十年近くもアメリカにいるので、日本語があやしい。こちらも英語にするべきか、日本語にするか、いつも迷うが、今回は言うべきことをはっきり言える英語のほうがいいか、と思い、つい、かなり強い調子ではっきりと、アメリカのマッシュルームは欲しくない、送ってくれる気持ちはうれしいが、それとこれとは別で、なにか送ってくれるときはこちらが欲しがっているかどうか訊いてからにしてほしい。と言ったのだが、なんだかよくわかっていないみたいで、じゃあ、もう送らないからとか言って切ってしまった。
後日、松茸が届いた。中型のものが八個入っていて、これなら持て余すほどではないとわかった。偶然、アメリカ生活が長かった友人から電話があったので、そのことを話したら、あなたね、シアトルの松茸は有名なのよ、風味は日本ほどではないけど、味はおいしい、何度も食べたわ、いうのを聴いて気持ちが変わった。
まずは天ぷら、そして、あとはフォイル焼き、いずれもとても美味で、新鮮だった。
また、従妹に電話、今度は素直にありがとう、おいしかった、と言ったのだが、もう送らないから、と言うだけで、なんだか会話がおかしい。
そのあと、何を言ってるかわからない、よく、聞こえない、と言うので、耳が遠いのがわかった。一方的にしゃべるのはそのせいなのだ。
メールするからね、と言って切り、これまでの経過を長文の英語メールにしたのだが、本人は宛名をまちがえたこともわかっていないので、こちらがどれほど困ったかは、わかっていないらしく、気分を害したままなのだろう、まだ返事はこない。
勘違いバアサンと、せっかちバアサンが、自国語でしゃべらない、妙な会話をしたままの、珍事に終わってしまって、後味がわるい。
こうなったら、THANK YOUカードで手書きの手紙を送るしかないかな、と思うのだが、シンドイのである。
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