椅子物語
十年まえ、この30坪の家を建てたとき、それまで使用していた大きなテーブル、10人分の椅子などをすべて処分し、四人分くらいのテーブルと椅子を購入した。テーブルは当時雪ヶ谷にあった、海外の中古家具の店で、両端を折りたためる英国製を、私の好みで買ったのだが、椅子のほうは、夫とわたしが座る二脚を、夫が座り心地のよさにこだわり、自分で和製のカリモクのものを選んできた。座面と背の部分が布で、わたしはあまりその椅子を好まなかった。おまけに座り心地はいいのだが、少し低めだったので、高さ調整のため座布団を補うという面倒が生じ、インテリアにマッチする生地を探して、ミシンで手製、それを時々は洗濯するという手数が加わった。
ダイニングの外に面した窓の部分は少し張り出していて、三、四人は座れそうなベンチにしたので、収容力は十分だったが、その向かい側に、わたしは自分のこだわりを残したくて、予備の椅子として、ヨーロッパ風のカフェでよく使われるタイプのアンティークチェアを一脚買い足した。数年前だったと思うのだが、三宿のアンティーク家具店『グローブ』で、一万円で購入したのを覚えている。
先日テレビで放映された、『暗くなるまで待って』の映画でそれと同じチェアをダイニングで使われているのを観て、ああ、オードリー・ヘップバーンが座るのにふさわしい椅子なんだ、とちょっとうれしくなった。
さて、十年使用し、カリモクのチェア二脚は布の部分が色あせ、やぶれも目立ち、見る影もないあわれな状況になった。近くに張り替えをする店はあるが、我が家のタイプだと布地も、手間もかなりな量になるので、一脚二万以上はしそうである。
現在、夫はもう椅子を探しに外出するなど、まったく不可能である。
これはわたしだけの選択で、新しい二脚を買うことにしよう、そう決心しながらちょっとウキウキしていた。
となると、あのカフェチェアと違和感のない、アンティーク的なものを探さなければならない、とりあえず、まだ閉店しないで、同じ場所にオープンしていた『グローブ』に出かけてみた。あの種類のダイニングチェアは沢山あった。但しもう数年で三倍以上も値上げしている。二脚をあれと同じにするつもりはなかったし、どうしてもこれはというほどの別種にも出会わなかったし、私の予算もあの時の三倍を出すつもりはなかったので、ほかのを探すことにした。
ネットで欧米中古家具で探して、品数が多そうなところと、見つけたのが代官山の『Idea』 ある。英国製、イタリア製、チェコ製、などなど、種類も豊富で値段も安い、中級家具で、座り心地に関しては、疑問が残るが、わたしはもう疲れていて、カリモクまでチェックする気力も元気もなかった。デザインと、色があの予備に買ったカフェチェアに一番マッチすると思ったので、これまでの人生で一番縁が深かったイタリアの製品に決めたのである。
夫は座るなり、カタくてケツが痛いと、不満そうだったが、わたしは無視することにした。
テーブルとの高さのマッチ具合は申し分なかったので、わたしとしては、よしにしたのである。
夫は捨てるはずだった座布団をのせて、これじゃ、高すぎちゃうしな、とまた不満顔である。
« モノクロは美を引き立てる | トップページ | みじめな好奇心… »
「住まい・インテリア」カテゴリの記事
- ご冥福を…(2022.01.18)
- 椅子物語(2021.09.19)
- ハンギングバスケットのリニューアル(2020.09.06)
- 満足度イマイチの外出のあとで(2019.04.18)
- ミモザ、我が家のシンボルツリー、そして花たち(2019.03.02)
カフェチェア、すてきですね。 今回購入されたのは一部しかみえていませんが、これもステキです。 それにしてもアンティークがかなりお安く買えるのですね。
三宿のグローブ というお店も検索してみました。 ただ素敵だな、と思うのはsold outが多かったですけれど。
私は大原照子さんの『55㎡の暮らし替え』という本をもっていて、時折眺めるのですが、 お宅様のによく似た アンティークの椅子をお使いになっています。
私は去年の暮に見た「ノースライト」 というテレビドラマにでてきた椅子が今も気になっています。ブルーノ・タウトの作品に似ているという椅子です。 すっきり端正な感じの椅子。
そういう椅子がほしかったのですが、デスクチェアを今回買い換えるのに、探して、迷って結局は実用本位の椅子にしてしまいました。
それに今普通に買うと、5万円以下ではみつかりません。買ったのは税込みで10万円近くしました(まだ届いていませんが)
あの素敵な椅子が1万円! 3倍になったとしても、、、大ショックです。
投稿: yk | 2021年9月20日 (月) 23時29分
ykさまからコメントいただけるなんて、光栄です。
「ノースライト」早速、検索してみました。ブルーノタウトの椅子、さすが建築家の選んだ椅子は存在感がありますね。お目が高いです。
わたしの同い年の友人に、建築が専門で、一級建築士の資格を誇りにしているひとがいますが、彼女は家具の目利きでもあって、私が購入した椅子の値段をきいて、イタリア製といってもそれはデザインだけで、メイドインチャイナよ、きっと、と言っておりました。グローブは店自体もアンティークみたいで、エレベーターがないのです。私が探した椅子類は地下に多く、階段を下りていったら、あやうく、転びそうになりました。店歩きも限界あり、とそのとき思いました。
大原照子さん、あの方の料理本をどれほど愛読していることか、高齢になったら、生活も縮小、料理もここぞというところには、手は、省かず、作るべしというレシピをそれはそれは愛用しています。その、ここぞというときにシェリーを使うのを愛してやみません。
今いい家具はほんと、お高い!、わたしのデスクチェアはオカムラですが、もうひじのプラスティックカバーがはげて、仕方がないのでミシンで布カバーをつけてごまかしていますが、座り心地だけは、今でも抜群です。
ダイニングもそろいで選べば苦労はないのですが、我が家の狭さでは難しく、自分のこだわりを通そうとしたゆえの、苦労でした。
投稿: ばぁば | 2021年9月21日 (火) 20時40分