よろよろデート
週はじめ、夫が銀行預金通帳記入をしたいというので、自由が丘まで付き添っていった。最寄りの多摩川線の駅までは普通に歩けば五分ほどだが、坂があるので、下りではあっても杖が必要な夫には、つらいところだ。案の定コンビニまえでベンチにへたってしまったのだけれど、運のいいことにちょうど通りかかったタクシーに乗れた。
二つの銀行で四つの通帳に記帳、それはわたしがして、点検は夫がする。そろそろ全部預かって管理することも引き継ぐときがきているか、とも思うのだが、夫はまだできることは自分でしたいらしい。歩行が不自由なのをのぞけば、それをする能力はまだしっかりしているので、こういう形でできるだけ続けていければと願った。
杖の先端がすりへっていて、リハビリのひとに、部品を付け替えたほうがいいと、注意されたというので、夫には駅前のベンチで待っていてもらって、直してくれる店を探したのだが、見当たらない。マーケット角の雑貨屋さんで訊いたら、先の通りを挟んだ次の建物に傘屋さんがあって、そこでしてくれる、というので、夫に歩ける?と訊いたらOKと答えて、そこまでゆっくり歩いた。
傘屋さんの女性店主は、見るなり、これはひどい、もう、付け替えてもダメです、それに、長さを調節する部分が、バカになりかけています、と言うので、夫も買い替える気になったようだ。じゃ、これ、と言って選んだのは、一万円ちょっとしたけれど、黒の持ち手に鳥のマークが浮き出ていて、デザインがしゃれており、いいチョイスだと思った。遅ればせの誕生日プレゼントに、とわたしが支払う。
お昼時だったので、ちょうど近くにあった老舗のカフェに入って、ミックスサンドを一皿注文、夫はアイスコーヒー、わたしはホットを注文、ずいぶん待たされたので、段取りが悪い店だとか、メニューを見るなり、高すぎるよ、これ、などと言うのが、夫の文句の多いところで、いつもなら気に障るのだけれど、きょうは、まだ、こういう元気があるだけ、ありがたいと思った。
そのあと、駅近くの惣菜店で、彼がカツカレーが食べたいと選んだ品を買って、またタクシーに乗る。わたしのほうは、聞いただけでも胃が痛くなりそうな彼の好物なのだが、まだその食欲があるだけも頼もしいと思った。
夫はタクシー代を自分で支払いたいらしく、運転手さん、すまないけれど、一万円でお釣りある?と訊いたら、ありますとも、現金はたすかります、と答えたのでびっくりした。なんでも、カード支払いが導入されてから、機械をとりつけるのが面倒だったのと、カードによっては支払いがスムーズにいかないトラブルが続出しているのだそうで、支払う方は便利でも、受け取るほうは、頭を抱えることも多かったらしい。
こういう思いがけない実話を耳にすることも、外出できたからで、家にこもってばかりより、外の風に吹かれることは、生きているという実感を得られる。
とはいえ、今日、この運転手さんの話、おぼえている?と訊いたら、夫は全然おぼえていない、と答えたのであった。
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