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2020年9月27日 (日)

オペラ『仮面舞踏会』に思う、1

METライブヴューイングアンコール上映も終わりが近くなった。

今回、私は『マイスタージンガー』『セヴィリアの理髪師』『仮面舞踏会』の三作品をすでに観ているが、感動が一番大きかったのは『仮面舞踏会』である。

 

ヴェルディ中期の三大作品の一つと言われるくらい、高く評価されているのに、なぜか上演回数は少ない。そのせいだろうか、ストーリーも知らないまま、不勉強なまま、素のままで観に行ったので、アリアがすべて美しく耳に残り、場面展開の見事さに惹きつけられ、あらためてヴェルディの偉大さを思い知ったのであった。

 

歌手勢がすごかった。今や重鎮テノールトップの一人、アルバレスの詠唱もさすがであったが、かねてから、この人のバリトンこそ聴くべき声と評判を聞いていた、舌をかみそうに長くて難しい名前のディミトリ・ホヴェロストフスキー、そしてあの『ロベルト・デヴェルー』で鬼気迫る女王を歌いまくったもう一人の、舌かみ名、ソンドラ・ラドヴァノフスキー、この三人がかわるがわる歌い、合唱し、信じがたいほどの美声をひびかせてくれるのである。見応え、聴きごたえ十分すぎるほどの体験であった。Photo_20200927225401

しかも、第一幕第二場にしか出演しないがゆえに、なお、忘れられないほどの印象を刻み付けられた、魔女のウルリカ役ステファニー・プライズ、このひとの、ドスのきいた、と言いたくなるくらい迫力のアルトメゾの声、大柄すぎるほどの体重があるがゆえに、まさに適役、いや、参りました、と頭をさげたいほどの演技と詠唱であった。

そして、そして、それを、この上なく盛り上げたのは、ファビオ・ルイージの指揮によるオケの演奏である。インタビューのときマエストロ・ルイージは、小さい音をどれほど響かせるかが、大事だ、と言っていたが、第二場冒頭部分に響かせる鋭い単音は、繊細さを含むからこその、これから繰り広げられる魔的な占いの世界を、いみじくも予告させるに十分の、効果音であった。

マエストロ・ルイージがPMFフェスティバルの指揮者として招かれていたとき、札幌の楽屋に、連れていってもらって、彼とご家族に紹介されたことがある。指揮者より学者のようなイメージの繊細で知的な印象は今なおはっきりと覚えている。

 

スエーデンの国王暗殺という実話をもとにしたストーリーなので、オペラ上演が実現するまでは、ずいぶんと月日を要したようだ。そしてローマのアポロ劇場での初演は大成功で、町のいたるところにViva Verdi!(ヴェルディ万歳)の落書きが見られたというほど、聴衆は歓喜し、うつくしい音楽に酔いしれたという。

 

印象に残っているアリアの中で、第一幕第二場に変装した国王が合唱の呼応とかわるがわる歌う「今度の航海は無事だろうか…」はどこかで聞いたメロディ、そう、『ホフマン物語』のクラインザックの歌を思い出した。オッヘンバックはヴェルディに影響を受けていること、大ではないのか、そんなことを想いつつ、聞きほれたのであった。

 

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