必見ドキュメント『疑惑のカラヴァッジョ』
今日、六月十二日のNHKEテレの午後10時からの『ドキュランドへようこそ』は必見である。
今のこの時期、ドラマやトークショーなどに魅力あるものが見られないとあって、わたしはNHKBS1の、世界ドキュメントばかりを好んで観ていた、そのうちのとびぬけた一作がこれ、「疑惑のカラヴァッジョ」だ。
フランス、トゥルーズの民家の屋根裏部屋から見つかったほこりにまみれた絵画作品がカラヴァッジョのものだという、フランスの画商とそれに反論する美術史家や鑑定家との対立、ついにはブレラ美術館で、カラヴァッジョの複製と並んで展示されるという出来事まで起き、オークションを経てどうなったかを追うドキュメント。
いかにもフランス人、スマートではあるがしたたかそうな美術商テュルカンと、イタリア美術史家の意見が対立、旧約聖書外典のユディト記を描く、『ユディトとホルフェルネス』ユディトがホルフェネスの首を切ろうとしていて、侍女がその首を入れる袋をもって待ち構えている、なんとも残酷な図。細部にわたって間違いなくカラヴァッジョの筆跡があると主張するとテュルカンと、いや、カラヴァッジョにしてはグロテスクすぎると、冷静に言い切るイタリアの美術史家、わたしはそちらの意見にうなずいていた。
ボルゲーゼ美術館で圧倒されたカラヴァッジョの部屋、静物画も混じったその部屋に並んだ宗教画、そのテーマが残酷でもグロテスクなものは一つも見当たらなった。
フィレンツェのウフィツィ美術館にあるメデューサでさえ、不気味だけと言いきれない、神秘的な美しさ、格調ともいえる、カラヴァッジョの美術性、を思い出していたからだ。
日曜美術館で耳にした言葉、絵画の名作は心を慰撫するものがある、然り、それこそがカラヴァッジョの作品をあらわすものと合点がいく。
この実録がどういう結末になるのか、これはまさに実在したミステリー、ドキュメンタリーならではのド迫力の傑作である。
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