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2020年5月15日 (金)

今こそ読むルース・レンデル

今から四十年ぐらい前、NHKで『ウエクスフォード警部シリーズ』という白黒の素晴らしく上質の刑事ドラマが放送されていたことがある。ゆったりとしていて、それでいて、当時の英国社会の細部にするどく切り込むスリリングな展開と、主役のウエクスフォード警部を演じるジョージ・ベイカーの風貌と、演技力にも魅了され、毎回楽しみに視聴していたのだが、意外に早くシリーズが終わってしまい、あまりにもがっかりしたので、NHKにぜひ、続けてほしいと、手紙を出したほどだった。Photo_20200515102601

 

その原作者が当時、英国のサスペンスの女王とまで言われたルース・レンデルだったということは、後になって知った。

 

当時わたしはアメリカのサスペンスの女王と称されたメアリー・ヒギンス・クラークに夢中だったからである。サスペンスとはゾクゾクからクライマックスの恐怖へ、とジワジワからゾクゾク、クライマックスの恐怖への二種があるとすれば、せっかちのわたしは前者を好み、クラーク女史のリズムは正しく、前者のわかりやすい、私の望みどおりのスピード感だった。

 

英国のサスペンスの女王と称されているのが、レンデルだと知って、読みかけたこともあったのだが、ジワジワが長くて、中途で挫折していたのだ。

 

カレンダー真っ白、食事の支度以外は全部自分の時間のいま、最良のステイホームの過ごし方は読書だ、と思い立ったとき、なぜか今こそ、レンデルだと、その名が浮かんだ。およそ一か月半まえ、図書館がクローズする最後の日に間に合ってわたしはハヤカワポケットミステリーのレンデル本四冊を借りることができた。

 

女流翻訳家の第一人者、深町真理子さんの解説によれば、レンデルの作品には大別して二つの流れがあるという。一つは作家としての感性を対象の隅々にまでゆきわたらせ、均整の取れた古典的な世界とつくりあげる、先に述べたジワジワの長いもの、と、感性を一点に凝縮させてその部分だけを拡大して見せる傾向のもの、レンデルはほぼ一年に一作の割合で、この二つを交互に書いているのだという。

 

図書館の四冊はどれも前者のジワジワものばかりで、そのうちの二冊、『悪意の傷跡』と『街への鍵』を完読した。前者にはウエクスフォード警部が登場するが、登場する人物の名が四ページにわたるという、大長編で、女性のDVを取り上げた、当時としては画期的な社会問題を深く掘り下げている。

後者は二十世紀最後のほうに執筆された晩年の作品で、これまたジワジワものではあるが、リージェントパーク周辺で起きる謎多きホームレスの殺人事件も入り混じった、美しいい女性の恋物語、こちらも地図を片手に読めば、リージェントパークの全容がレンデル女史の描写力ですべて把握できるほどの、長いジワジワがあって、完読するのに時間がかかった。

 

もう一つのレンデルもの、一点に凝縮させたものがぜひ読みたいとアマゾンから購入したのが『ローフィールド館の惨劇』。「ユーニス・パーチマンがカヴァデイル一家を殺したのは読み書きができなかったためである」という衝撃の一節から始まるゾクゾクものである。

現在一気に半分まで読了、この種に最初出会えたなら、もっと早くにレンデルフアンになれたものを、とも思うが、今この年齢、この時期だかこその出会いを感謝したい気持ちにもなるのである。

ネット検索で知るレンデル女史は一代限りの称号「バロネス」を獲得、美しく知的で見事なスピーチをするひと、そのインタビュー記事がYouTubeに数編観られる幸せも、現代だからこそであろう。

Ruth-rendell 

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