ミモザの余韻
伊豆にいるあいだに、ミモザはすさまじい勢いで開花した。
花には無頓着な夫さえ、ため息をついて、今年の花つきはスゴイ、と言うくらいなのだ。
ミモザ好きな友人たちに見せたいと、電話してみた。
今週はほとんど埋まってて、というひと、今日なら空いてる、と言われ、ちょっと考える、これからホームドクターのところで薬をもらわなければならない、キッチンも片付いていない、旅行のあとの荷物の整理もまだ、でも何とかなるかも、と三時に来てもらうことにする。
もう一人にもどうかしら、と電話してみると、週の五日はご主人のつきそいで医者通い、きょうは唯一の出かけない日なので、無理とのこと。
12時近く医院から戻って、トイレの床掃除をまずはじめ、キッチンのテーブルクロスを変えてお客用にし、例のミニフルーツケーキを焼く。猛烈な勢いで洗い物を片づけ、余計なものはすべて浴室に入れて、なんとか体裁をととのえた。
彼女はタクシーで現れた。数年ぶりだったが、自分でシャンプーはしない、というひと、髪はまだ豊かで、白髪を薄茶色にして、美貌を保っている。
ショックだったのは、あんなに料理が上手なひとだったのに、ご主人の自宅介護が無理になって、ご主人だけ介護専門のホームに入居の現在、料理をまったくしなくなったという事実。
おいしいもの好きのそういう人向けなのか自由が丘の『ダロワイユ』が一人用の一皿グルメを売り出したという私の情報に目を輝かせた。
会話がありすぎて、盛り上がりが足りない、もしかすると彼女の心は一人用のディナーのほうに行っているのかも、と思ったり、我が家の夫が二階にいるのを意識しているのかもと思ったり…
ミモザを二枝おみやげに、見送る。身長のある彼女の後姿、歩き方が颯爽とではなく、そこに八十の年齢が見えていて、さみしく感じた。
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