田園調布にしかないものを買いに出かけた。
富澤商店で、フルーツケーキの材料を買う。パウンド型ではなく大き目の平たい角形で焼くミニケーキは簡単に焼けるし人にあげると大層喜ばれるので、近頃よくつくる。
細かく切ったドライフルーツ、ラム酒などに漬けこんであるレーズン類など、そしてチェリーブランデーなどの小瓶を買い込み、ついでに、ほかと比べて安かったコーヒー豆も買った。
そのあと、「あけぼの」で夫の好きな最中とおせんべい、彼はここのあんこが一番だと言う。
隣りに新しくできたベーカリーがあったので、のぞいてレーズンブレッドを半斤買って、小銭入れを出したのだが、十分な小銭がなかったので,お釣りをもらった。
その日は買い物袋とポシェットを斜め掛けにしていて、そこに財布と小銭入れを入れていた。財布をポシェットに入れたのはおぼえているのだが、小銭入れは外に出てからしまったような記憶があるが、そのときは次に行くつくだ煮店の有明家のことを考えていた。
有明家でシソ昆布100グラム入りを買って、小銭入れを探したのだが、ポシェットの中になかったので、買い物袋に入れてしまったのだと思って、またお釣りをもらい、外のベンチでつり銭を小銭入れにうつそうと思って探したのだが、買い物袋の中になかったので、これはおかしいと気づいた。あけぼのの菓子袋の中もないし、消えてしまっている。
どこかに置き忘れているのかもしれないと、もう一度、立ち寄った場所を一軒一軒戻って店主に忘れていないか尋ねた。なにか思い違いをしているかもしれないので、富澤まで戻って尋ねたりもした。でもなかった。
ベーカリーに再度寄って確認したら、店主があの鍵がぶら下がっている小銭入れなら、出していらっしゃいましたよ、と言ったので、やはり記憶は正しくこの店まではあったのだとはっきりした。落としたのだろう。でもカギがついているからチャリンとか音がしただろうに、聞こえなかったのだろうか? 家の鍵がついているのが困る。小銭入れの小ポケットには整骨院の診察券が入っているので名前がわかってしまう。カードはポイントカード二枚だが、どうしよう、それにしても歩きすぎで疲れた、バス停まできて夫に電話をした。交番にとどけておけよ、と彼が言った。そうだ、それを先にすべきだったのに。
交番ってどこにあったっけ。夫がよくおぼえていて教えてくれたので、旧駅舎のそばのそこまでまた足をひきづって歩く。
オマワリサンはおっ、来たな、と言う顔をしたので、もしかしたら、と思ったら、やはり届いていた。まず落としたものの詳しい内容を用紙に記入するように言われたのだが、小銭入れのブランドCOACHが出てこない、ポイントカードと言う名称が浮かんでこなかったり、その店の名、あと整骨院のカードのことが念頭から消えていた。名称がすぐに出てこない、と言ったら、そういうことがわかっているなら、大丈夫、彼は笑って答えた。届けてくれたのは若いひとで、匿名にしてほしいと言ったのだそうだ。田園調布だから出てきたのかしら?と言ったら、最近はどこでも出てきますよ、日本は、と彼が言った。
本当にありがたかった。
届けてくださった方、ありがとうございました。
やっぱり80歳、これからはいろいろな店であまり一度に沢山買わないようにしよう。
あのときのパニックのような状況、あれが怖い。
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