『真田丸』終わる
『真田丸』が終った。一回も欠かさず、観ていた。
と、いうのも、冒頭の音楽に衝撃をうけるぐらい、魅せられたからだ。時代劇にヴァイオリンのソロを使うとは、何という発想力、それがしかも、血沸き胸躍らせるいいメロディである。これまでの大河ドラマの筆頭をいくぐらいの傑作だと思う。
左官のひとがつくったという題字もいかにも築城のイメージを彷彿とさせる効果があったし、合戦のすさまじさを象徴する動画もよかった。
とかく大河ドラマではナレーションが話題になるが、有働アナは耳障りのいい声音をときに張りつめて、ドラマの格調を高めることに貢献していた。俳優の演技だけでは表現しきれない、歴史の持つ重みを、彼女の声が語りつくしていたように思う。
どんなドラマが展開するのか、期待いっぱいで見始めたのだが、イメージしていたものとはかなり違った。真田幸村と言えば、配下にいたとされる忍びのものが想像されるが、それがさっぱり出てこない。わずかに疾風のごとくにスピード感あふれる登場をする「佐助」にその面影がある程度だ。
ともかく、毎度毎度、戦国時代の権謀術策のやりとりばかりなので、観終ると、またか、とフラストレーションがたまった。
これまでの大河ドラマでは父親役はすぐに死んでしまうものが多かったが、今回は違った。
長生きなのである。『真田太平記』で幸村を演じた草刈正雄が自ら望んでこの役を勝ち取ったと言うだけあって、なかなか渋い演技で好演していた。『・・太平記』のギラギラした丹波哲郎とは異なり、すっきりしたしぶとさいっぱいで演じきり、今回一番得をしたひとは、このひとではないだろうかと思われたほどだ。
ネットのレビューでは脚本をめぐって、かなり酷評があふれていた。わたしもそれにうなずくところもあった。
堺雅人というひと、なんとも優しい目をしている。だが、あの銀行ドラマの主役のときのように、ここぞというときには鋭い眼光がみなぎり、圧倒されるが、彼が、ようやくその魅力を発揮しはじめたのは、44話、真田丸が築かれたころからだ。
まだか、まだか、とじらしておいて、最後ちかくで幸村が、こうあってほしいというイメージぴったりの凛々しさをみなぎらせる、衝撃を、脚本家はねらっていたのではないか。
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