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2016年12月13日 (火)

P.D.ジェイムズを読む

読み始めたらやめられない、傑作長編ミステリーをかかえている幸福感はなんとも言えないものだ。晩年に足やら腰やらの痛みをかかえていても、いっとき、読書の世界に没入できる楽しみがあれば、小さな悩みは忘れていられる。
P・D・.ジェイムズの本が面白いということを伝えきいて何度が読もうと挑戦したのだが、これまでそれが果たせずにいた。
と、いうのもせっかちなわたし、最初にハートをわしづかみにされないと、前に進んでいかないという、性格がわざわいしていたのだと思う。

実母がちょうとわたしの今の年頃に、P・D・ジェイムズは面白いねえ、と電話をかけてきたのを、思い出し、読書時間が沢山とれそうになった、この二週間、ついに、もう一度挑戦してみようと、まずは英国推理作家協会賞を受賞した『死の味』上下二冊を、図書館から借りてきた。

導入部およそ10ページはやはり長く、ちょっと退屈、上下巻読み終わったいまは、その導入部が重要なのだということがわかるのだが、漢字が多く、翻訳文も古びている。65歳の独身女性を、ウォートン嬢というのが気になる。いまならミス・ウォートンだろう。
訳文につっかかり、登場人物の名前を覚えるのに苦労しつつ進む数十ページ、政界でも活躍した準男爵が浮浪者と共に、教会で惨殺された導入部から、詩人でもあるダルグリッシュ主任警部はじめ、階級制度がくずれつつあるイギリスの赤裸々な様相を明らかにする、登場人物を目配りよく配置させる具体的な描写に、次第に目をうばわれるようになってきた。

ジェイムズ女史は人生を語るのが巧みだ。女性警部とその祖母との関係、死体の目撃者、ミス・ウォートンの孤独な生活、アパートで物音にうるさい階下の家主に気兼ねをして、しびんをつかって排泄し、それをわからぬように、昼間始末するところなど、ミステリーの興味だけではない、重厚な本格小説を読んでいるような筆致に魅せられてくる。
自然の描写も美しい。「ロンドンの東・・・青みがかった深紅に染まっている。深々としたブルー・ブラックの夜に水彩絵の具の筆を注意深く一振りしたような空だった」など。

音楽にも詳しい。病理学専門医が精神浄化のために聴く、テレマンのヴィオラ協奏曲ト長調、それがどうしても聴きたくなってyoutubeを検索、なるほどとうなずく。

犯人は下巻の中途で明らかになるが、それからが目を離せぬ面白さである。いかにしてつかまるか、複雑な人間関係がどう解き明かされるのか、その興味で、ページに目が釘付けとなる。

それぞれの登場人物の人生模様、心理描写がしっかりと描かれているので、読後の満足感は非常に大きいものとなった。

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コメント

P.D.ジェームスは、かなり高齢になるまで現役で書いていますね。私は、昔に読んだので、記憶がかすかになっています。でも、PDジェームスのミステリーは、しkっかりと心理描写がなされていて好きでした。再読してみようかと思います。

aiaiさま
遅すぎる開眼をお笑いください。でもなかなか傑作を見つけがたい、昨今の出版界、携帯もなかった時代を古すぎると思わせない筆力のこの本に、出会えたことを、今だからこそ、幸いにおもっております。
あなたに教えていただいた『満潮』、いまウエイティング三番目、まだまだ先です。

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