読み始めたら、やめられないヘニング・マンケル本 3.
『目くらましの道』『殺人者の顔』を読破し、いまは『ファイアーウォール』上巻を読み終わったところだが、きょう一日で300ページを夢中になって読み進ませてしまう、マニングの筆の冴えには、驚くばかりである。
『殺人者の顔』では農家の老夫婦惨殺の事件が発端であるが、飼っている馬がその日、何者かによってエサが与えられていたことが、重要なカギとなることを、直感した刑事ヴァランダーは、馬のことを知るために、かつて親友でいまは競走馬の飼育をしている友を訪ねる。
ヴァランダーの趣味はオペラのアリアを聴くことで、車の中でもCDを流しながら運転している。
この友がかつてオペラ歌手をめざしていたとき、ヴァランダーはマネージャーとなって働こうと志したのだが、夢やぶれ、二人の友情は終わった。
久しぶりに会って二人が言葉を交わす場面はこの作品の圧巻ともいえる。昔の友情を懐かしみ、期待をこめて問いかける彼に応える友は以前の面影はなく、すさんでいる。
二人が会わずにいた時間でなにが変貌したのか、時間のもたらす、とりかえしのつかないむなしい失望感がふたりの会話のはしばしに、あふれ、わたしの人生での似たような経験を思い出しながら、深く感情移入させられた。
ヴァランダーシリーズはWOWOWですでに放映されていて、英国のケネス・プラマーが自ら製作、主演しているようだが、ちょっとイメージとは違うような気がした。『フレンチアルプスで起きたこと』のヨハネス・バー・クンケー・トマスのほうが似合っているのではないか、この役はやはりスゥエーデン人に演じてほしかったのに、と思った。
でもわたしは幸い読むのが先になっている。
まだ当分左膝をかばいながら、遠距離外出を避け、予定をつくることを極力避けている身としては、これほど夢中に読みふけられる小説とめぐりあえたことで、むしろ、ラッキー!!と思ってしまうほどなのである。(了)
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