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2016年1月17日 (日)

読み始めたら、やめられないヘニング・マンケル本 1.

一カ月に一度文学のことを語りあう友がいる。
女子大の付属小学校でわずか一年だけ一緒に学んだ間柄だが、彼女はその後転校してしまい、会うことはなかった。

同窓会で数十年ぶりに再会したのに、ふと話題に出たロザムンド・ピルチャーのことで意気投合し、もっともっと話し合って、会わないでいた数十年の溝を徐々に埋めていこう、ということになった。彼女は英文学を大学で教える仕事を長くしていたので、専門家としての文学を読み取る力に長け、わたしは純文学ではないが、いわゆる英米小説の翻訳を十年以上していたから、文章の行間からにじみ出る作家の感情をとらえることが得意であることを、彼女は評価してくれて、二人のあいだになにかぴったり一致する共通意識のようなものを感じ合う快感を、お互い大切に思うようになり、もっと早く会いたかったけど、まだ間に合ったわね、などと話し合っているのである。
ちかごろ北欧のミステリーが卓越している、とおしえてくれたのは、その彼女なのだ。

わたしはすでに、『ミレニアム』や『スウェーデン国家警察特捜班』などを映像で見ていて、目が離せないほど、ストーリー展開の素晴らしさに見入ってしまっている経験があったので、見るのが先か読むのが先か、ということになるともう見てしまっているけど、という感じがあったのだが、唯一映像をまだ見ていない、ヘニング・マンケルの『目くらましの道』を読んでみることにした。

そして、読みだしたら、やめられないほど面白いミステリーを、この数年間探していたのだが、ついに出会えたという実感が持てた。

導入部から読者の心をわしずかみにする力がある。余計な文章がまったくなく、短いけれども、これ以上ない的確な表現、登場人物のいずれにも、人生がくっきりと浮かぶ描写にすぐれ、解説者の言葉を借りれば、「警察捜査小説として迫力、意外性に満ちた伏線の張り方、社会情勢をひとつの犯罪によって切り取ったプロットの冴え」が結集された珠玉の作品なのである。

主人公の刑事クルト・ヴァランダーの人間像に惹かれる。ふたたび解説者の言葉を借りれば「人は人として生きている限り、いつでも未完成な存在である。だからこそ、真摯に生きようと思えば、応えのない問いをくり返し、おのれの内面に向き合わなければならない」犯人を捜しながら、無力さにもだえ、健康問題、家族問題、人間関係にふりまわされながらも、闘うことをやめない、誠実さ、粘り強さ、直観力の鋭さに、感情移入させられてしまう。

物語の中にどっぷりつからせてくれる、翻訳の見事さを語らずにはいられない。柳沢由美子というひとは、ストックホルムでスウェーデン語科を修了しているだけあって、読み進むうちにもまったく違和感のない、達意のこなれた文章力を発揮している。

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コメント

ついにヘニング・マンケルのヴァランダーを読み始められたのですね。私もヴァランダーの大ファンです。スエーデンの警察小説は、昔のマルティン・ベックの頃からずっと読んでいましたが、マンケルの人物像とストーリーの凄さは、他の作家に無い物だと感じ入っています。最初の頃から順を追って読むと、ヴァランダーの家族と友人との関わりの変化が我が事のように思え、つい感情移入してしまいます。本当にマンケルは、得難い素晴らしい作家であり、柳沢さんの翻訳も的確な日本語で読者として幸せです。

aiaiさま
ご存じでいらっしゃいましたか。さすが、と驚嘆いたしました。
わたしは、ずっと映像の世界にはまっておりまして、ようやく、ふたたび、読書の喜びをとりもどしたところです。
出遅れ、著しく、お恥ずかしいのですが、一気に読むと、勿体ないので、少しずつ、じっくり読みすすもうかと思っています。
いろいろお教えくださいませ。

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