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2015年10月14日 (水)

一段落の日

孫娘のトロンボーンリサイタルは新大久保の楽器店ビルの地階ホールであった。
杖をついて歩く夫との歩調が合わず、何度も立ち止まりながら、薄暗い細い路地の奥まで進む。こんなところに、そんな場所があるのだろうか、と半信半疑になりつつ、ようやくそれらしいところに着く。二、三人待っていたが、座るところもなく、開場まであと二十分もあるというので、近くのカフェでコーヒーを飲むことにした。百人ぐらい入るというホール、夫は五十人がいいとこじゃないかと言ったが、ともかく無事に終わればいいのだ、と思った。

三十分ぐらいたってもどってみると、驚いた。満員なのである。補助椅子まで出ていて、立ち見もぎっしり。孫娘の奨学金の保証人である、息子が最後尾の壁によりかかれるところに席をとっておいてくれたので、座る。孫息子はきれいなガールフレンドと一緒だった。
驚くことばかりだ。
孫娘はマイクを持ち、まず大学二年でリサイタルが開けたことの感謝の言葉から始めた。上がっている様子ではなかったけれど、”天然“という彼女のあだ名の通り、「あの、ええと、それで」など、とつとつとしたしゃべりようが、好意的な笑いをさそい、場内が和んだ感じだった。高校と大学、両方のコンクールで優勝したときの課題曲を「きょうはリラックスして吹きます」といって演奏した。上下に変容するテンポの速いフレーズが含まれていたが、おかしな音も出さずにこなした。

娘が車できていて、送る、と言ってくれていたのだが、孫娘と言葉を交わすために並んだ人の列があまりに長く、夫は咳き込みそうになって、息子から水を渡されたりしていたので、わたしたちは、タクシーで帰ることにした。
オレたちの出番は終わったみたいだな、と夫がつくづくとつぶやいて、わたしも大きくうなずいた。

孫娘が中学から高校に在学中、わたしは何度もトロンボーンのよりすぐりのコンサートにつれていった。もし彼女の音楽性が評価されたとするならば、それが貢献しているのではないかという自負がある。
わたしの父も戦後、まだ欧米のクラシック名演奏家の音楽を聴くチャンスが乏しいときに、ギーゼキングやハイフェッツの演奏会につれていってくれた。よい音を聞き分ける自分の耳に少しでも自信が持てるのはそのためだと思う。
父の存命中に、そのことの感謝をしっかりと伝えなかったことが、いま悔やまれてならない。

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コメント

お孫さん大学2年になられたんですね~。
細かい描写でイメージしやすくて、写真も拝見しながら読んでいます。

立見席まで出てぎっしり・・・、cannellaさんもお孫さんの成長に感激されたことでしょう。コンサートの手配など大変だったと思いますが、ご家族の温かいまなざしと愛が支えて
いるのでしょう。

いつもながら心にしみるワンフレーズ・・・。
《オレたちの出番は終わったみたいだな、と夫がつくづくとつぶやいて、わたしも大きくうなずいた。》

寂しさと同時に、手ごたえのある素晴らしい「一段落」に心からねぎらいの言葉を送り
たいと思います。


ちゃぐままさん
いつもながら、お心のこもったコメントありがとうございます。
16年間の娘たち親子へのサポートも終わりつつあります。もっとも今 夫は、娘の家の外壁修理業者選びを、手伝ってはおりますが・・・
孫との付き合いはつかず離れずを心がけるこのごろです。

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