聞き耳をたてる
整骨院でマッサージをしてもらったあと、肩と腰に電気をかけてもらっていたら、隣のベッドの話し声が聞こえてきた。
>毎日通ってきていたら、おかげさまで歩けるようになってきたんですよ。
高齢女性の声のようだ。
施術師の男性が応えた。
>それはよかったです。きょうも全身マッサージしていきましょう。
>わたし、いくつに見えます?
>さあ~、八十五くらいかと・・・
>ずいぶん若く見てくれたわ。実は九十九なんですよ。
>へえ~っつ!
わたしも隣でへえ~っつ、と言ってしまった。
>とてもそんなにおみかけしません。
高齢女性はマッサージ師に問いかけた。
>あなた、高校出てからマッサージの学校に通ったの?
>いいえ、ぼく大学で生物勉強してから、大学院行ってそれからマッサージ始めたんです。
また、へえ~っつ、だった。
>そう、若い時はなんでもやってみることだわ。何かうまくいかなかったら、また別のことやってみたらいいのよ。若いんだから・・・わたしも洋裁、仕事にしててね、八十までやってたの。でももう、ダメ。無理するとあとがひびくの・・身体がきかなくなってはね、仕方がないわ。
わずか十分たらずのあいだに、二人のひとの特異な人生をのぞいてしまった気がした。
それにしてもこの九十九の女性が相手の言葉をしっかり聞き取り、当を得た応えをするのに驚いていた。
人の手によるマッサージは手のひらから、「気」も入ってくる。その効果は大きいのかもしれない。何よりもこういう会話ができて、するひと、されるひと双方の気分を高揚させてくれるのがいい。
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