続続『ハリール・ジブラーンの詩』
死について
今度は死について伺いたい、とアルミトラが言った。
彼は言った。
・・・・・・
もしほんとうに死の心を見たいと思うなら
生命そのものに向かって広く心を開きなさい。
なぜなら川と海とが一つのものであるように
生と死は一つのものなのだから。
・・・・・・
死ぬのは風の中で裸で立ち
陽の中で熔けることではないか。
呼吸をとめるとは絶間ない潮の動きからこれを放ち、
何の妨げもなく昇らせ、ひろがらせ、
神を求めるようにさせることではないか。
・・・・・・
山の頂に辿りついたとき、
そのときあなたは昇り始めるだろう。
からだが土の中に横たわるとき
そのときあなたは真に踊るだろう。
ジブラーンは「生も死も、もっと大きな秩序の中の一部と考えるとき、死は新しい出発点と考えられる」ということを多くの比喩を通して歌いあげている、と神谷さんは解説している。
この『ハリール・ジブラーンの詩』の巻末に加賀乙彦氏の解説がある。彼は「宇宙的な壮大な詩の世界と聡明で善意にあふれた訳者との幸運な出会い」と題して、ジブラーンが日本での最高の理解者を持ち、しかも有能な翻訳者に恵まれ、詩人も幸福な出会いをしたが、読者である私たちもまことに幸福な詩の開示に恵まれたと述べ、ある、逸話を紹介している。
神谷さんがジブラーンの作品に触れることができたのは、当時の皇太子妃美智子さまから詩集『予言者』をプレゼントされたのが切っ掛けになったのだという。
神谷さんは現皇后陛下の心の友であったと聞く。
民間から皇室に入られた皇后陛下のご心労を想像するとき、同じ時代を共有してきた私にとっては、この詩集の持つ、深い意義と役割とが、一層胸にしみこんでくる思いがするのである。
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