2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
フォト
無料ブログはココログ

« マダム・マロリーとまほろ・・・と | トップページ | ハリール・ジブラーンの詩 »

2014年11月26日 (水)

神谷美恵子さんのこと

木の葉が散りはじめて、きょうのように時雨が冷たく土を濡らすとき、人生のむなしさを感じる。『ハリール・ジブラーンの詩』はそんなときに救いを与えてくれる一冊であるが、洗礼を受けたときに牧師をしていた同級生から贈られた本で、それまでわたしはこの詩人のことを知らなかった。この詩のことを書くまえに、まず、この詩を翻訳し解説している神谷美恵子さんのことを、二十年まえに書いていたので、その文をこのブログに残しておきたいと思う。


かけがえのない本との出会い

 風邪をひいてから、三週間以上もたつのに、まだ咳がとれない。
 ひたすら早寝につとめ、眠りにさそわれるまで、本を読む毎日が続いた。すぐに目を吸い寄せられる素晴らしい一冊をかかえて。
 神谷美恵子さんの著書である。
 戦前のILOの日本代表、前田多門氏の令嬢であった彼女は、英、仏語が堪能であり、賢く、美しく、国際人としていかなる栄誉も得られたであろうに、精神医学を志し、自らすすんでハンセン病患者を収容する長嶋愛生園医師として通う生き方を選んだ。
 私生活でも学者の妻として、二児の母としてあたたかい家庭を築いている。
多くの才能に恵まれた彼女は、生計を助けるために、語学教師を兼業し、依頼される通訳や翻訳の仕事をこなしながらも、「自分の生の意味」を模索し続けた。
「人間というものは、存在そのものとして尊いのであって、必ずしも、行動することにおいて価値があるのでなく、それよりもまえに、人生をどのように生きているか、ということ自体が、大切な意味をもっている・・・」「人間は自分を超えるものに対しては常に畏れの心を持ち、謙虚であるべきもの・・・あやまちやつまずきを重ねがちの自己をつねに反省し、貧しい心のままに、大いなる自然の力に身をゆだねて歩んでいくべき・・・」著作十巻の中の重みにあふれる言葉である。
仕事を持つ主婦の苦労や母性愛をつづる文に加えて、「六十になったら夫、妻とも、定年と言うことにして、お互いに義務も責任もないことにしようか」という理解あふれる夫君の提案に、「一応人間としての社会的義務を果たしたら、あとは、『実存的』義務に専念すべきでは・・・」という彼女の理念、それは、わたしの母親ほどの年齢のひとの言葉とは思われないほど、切実で、新鮮にひびく。
なぜこれほどまでに彼女の文章が心を打つのだろうか。
演奏する喜びを知るからこその音楽への深い理解、草花や四季折々の自然への愛情などへの、強い共感があるのはもちろんであるが、それよりもなによりもいかなるテーマにも、ひとの身になって思いやられる心、心理学上の言葉エンパシーが圧倒する強さを持ちつつ満ちあふれているからこそと、思われてならないのである。


« マダム・マロリーとまほろ・・・と | トップページ | ハリール・ジブラーンの詩 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« マダム・マロリーとまほろ・・・と | トップページ | ハリール・ジブラーンの詩 »