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2014年9月 5日 (金)

女性の暮らしについて 3

食の習いごと

主婦業を十数年して、海外生活で客料理の経験も豊富になって帰国してからは、和風の家庭料理をさらに究めたいと思うようになっていた。

そんなとき友人に誘われて通い始めたのが、牧田文子先生の荻窪のお宅。お庭に柿の木のある、瀟洒な日本家屋、和室の客間でレシピの説明、そのあと、旧式そのものの和風のお台所でそれぞれ持ち場をきめて六、七名が調理を担当し、先生はそれを見回られて指導されるという方式。
料理には美味と滋味があり、店で売られているものにもおいしいというだけの、美味はあるが、主婦が心をこめて手間を惜しまずつくった料理こそに美味を一つも二つも超えた、食べただけで身体がふるえてくるような、滋味があると教えられ、レシピどおりに仕上がったお料理はいずれも、ああ、またこれを自宅で再現したいと切望しないではいられない滋味深いものばかりであった。004


牧田先生は『ミセス』に取材されたり、NHKのお料理番組にも出演されたりしていたが、料理の写真がより効果的に見せるために油をかけたりされるのを嫌われて、主婦の友社の『和風料理の献立』を出されたあと、自費出版で、『喰籠の中』という本を二冊出版された。
合計三冊は使い古して、よれよれになってはいるが、開くたびに「命養う食事づくりには手が抜けません」とおっしゃった先生のお声が聞こえるような気がしてくる。

家庭の料理とは栄養、経済、技術、衛生という四つの条件が一つでもかけてはならない、味には、甘い、酸っぱい、鹹い(塩味)、辛い、苦い、の五味があり、技法には、煮る、焼く、揚げる、蒸す、生の五法がある。これを重複することなく、組みあわせるのが献立の基本であると教えられた。
有名旅館やレストランに行ってもこの基本ができていないメニューにがっかりすることも多い昨今である。

食べるものの好みが異なる夫とほとんどべったりの近頃の生活は、この五味、五法駆使の献立も必ずしもうまくいかないことも多い。お互い、それぞれにしましょう、と言って投げ出すこともしばしばである。
きのうは朝遅くおきてきて夫、放っておいたら残りごはんに海苔とベッタラ漬けで食べているのを横目で見つつ、ちょっとやましさを感じていた。
彼は一日二食で昼食抜きなのだが、わたしがお昼、パンケーキを食べることにしたので、一枚食べてみる?とさそってみた。ついでにキューリ、アスパラ、レタス、黄色トマトのたっぷりサラダも野菜不足にならないで、と、相伴させた。

夜は急にスモークドサーモンの押しずしが食べたくなり、これは独断でメニュー決めをした。無理強いかもしれないので、彼の好きな揚げナス、ピーマン、たっぷりつけ汁かけ、さらしねぎつけて、野球のテレビ観戦中の彼にお盆にのせて出前サービスしたら、すまないね~とか言って、大層感激していた。
それなのに大葉をはさんで上に赤のサーモン、彩もよく得意だった押しずし、いつも我ながら、おいしいと自信があったのに、それほどの滋味を感じられなかった。

腕が落ちたのか、わたしの味蕾がイカレてきたのか、こういうむなしさを伴う落胆が多いこのごろでもある。

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