ジャニーヌ・ヤンセン ヴァイオリン・リサイタル
オランダのヴァイオリニスト、ジャニーヌ・ヤンセンの名を知ったのはいまから五年まえ、ノルウエー、リソールでの室内楽祭。Y子さん夫妻、T子さんと四人でレイフ・オヴェ・アンスネス総監督の、この音楽祭を訪れ、一軒家を借り切って、連日連夜、ときには昼夜まで、近くの教会で開かれるコンサートを満喫したそのときのことだ。
教会の最前列で見たヤンセン、美貌に目が吸いよされたまま、細身のからだを曲想に合わせて、弓のようにそらせ、身体全体が楽器になったような圧倒的な表現力で弾ききるドヴォルザークやマーラー、そのド迫力の演奏が忘れられず、帰国してから、ほどなくヤンセン来日のニュースにとびついて出かけたのだが、その当日になってキャンセルの報道。失望のまま、五年が過ぎたのだった。
28日、紀尾井ホールのリサイタル。伴奏者はイタマール・ゴラン。あのときの埋め合わせをするみたいな豪華なプログラム。場内もほぼ満席。
前半のベートーベン、スプリングソナタは伴奏者がちょっとガンガン弾きすぎのように思って、いっしょだったT子さんに言ったら、彼女はゴランのフアンで、伴奏っぽくないところがいいという意見。わたしがルービンシュタインのおだやかなデュオを聴きなれすぎているのかも知れない。
確かに後半のフランクのソナタはゴランのすごさがあらわれていた。互いに誘い出す、かけあいのようなテーマの歌い方は胸がはずむほど美しく、圧倒されつつ、終わったら、日本のコンサートにめずらしくブラボーの声が飛び交い、拍手が止まなかった。
そしてサン=サーンスの序奏とロンド・カプリチオーソ、十代のときハイフェッツの演奏を聴いたことがある。今年34歳のヤンセン、円熟した女性の落ち着きと優雅さをあふれるほどに演奏にあらわし、ハイフェッツを忘れさせるほどの感動を与えてくれた。
夜のコンサートはちょっと足がにぶる年齢になったが、こういう満足感を味うとやはりまた出かけたくなる。
もう少し出かけられる身体でいたい、と心から思った。
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