吉田秀和さんの追悼記事
偉大な人物が亡くなったときの報道を、きょうの朝日新聞は、まさにこうあってほしいという形で、あますところなく伝えてくれた。
一面では死亡に関するニュース、社会面には四分の一のスペースを割いた評伝、そしてなんと文化面では早くも追悼文を載せたのである。
この堀江敏幸氏の文が出会いから、生前のエピソード、印象、敬意、実に具体的、これ以上ないくらい適確で格調高い語り口で、吉田さんを、称えている。崇高なひと吉田さんを語るにふさわしい美文である。
芥川賞作家堀江さんの本を読みたくなってきた。
吉田秀和さん、どれほど音楽の素晴らしさを教えてくださったことだろう。
ノルウエーが生んだ不世出のピアニスト、アンスネスのデビューを知ったのもこの方の紹介記事を読んだおかげだった。
フィッシャーディスカウが生前、音楽も絵も感動をあらわさなければならない、その感動はかならず人に伝わる、と述べたということをラジオの追悼番組で知った。
フィッシャーディスカウがお好きだった吉田さんは音楽の感動を、堀江さんの言葉を借りれば、「冷えた理性の匕首(あいくち)」のように鋭く、しかも「暖かくなる独特の声のふるまい」で伝えてくださった。
享年98、ご長寿であって、十分生を全うなさったことにいくぶん、救われる思いがする。
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