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2012年2月14日 (火)

出会いから

美術館の入り口は真新しい宮殿のように明るく晴れやかな美しさだが、展示室に一歩足を踏み入れると、照明が落としてあり、展示作品にだけ光があたっている。真っ白な石膏版の彫刻作品が多く、絵画は前衛的なものも混じっており、少年少女を含む若い男女がパステルカラーの背景の中で踊り戯れている、壁面を蔽い尽くすような美しい作品など、これまで見たことがないような新時代の作品群に思われた。もっと説明を訊いてから入ればよかったと思ったが後の祭り、最後に行きついたのが中庭を見晴らせるカフェ。空腹だったので昼食になるようなものは、と訊くとトーストサンドイッチがあるというので、それをオーダーして席を探す。
見渡したところ、空いているのは一席だけ、初老の紳士がカタログをめくっている隣りによろしいですか?とイタリア語で尋ね、チェルトという返事を聞いて腰を下ろした。
するとその人は、英語を話すか?と問いかけてきて、こちらの肯定の返事を聞くなり、抑制の効いた情熱的な話し方で、ここがいかに素晴らしい美術館かを語り始めた。なんでも彫刻家のカノーヴァや同じく彫刻家で画家のボッチョーニなど十九世紀の未発表の作品群が実に効果的にディスプレイされているというのである。
そしてなおも、このあとどこに行くつもりか、と訊かれたので、カラヴァッジオでも見ようかと、と言うと、ムゼオ・デル・ノヴェチェントは見たのかと尋ねてから、こちらのまだ、という応えを待ちかねたようにまた、その二十世紀美術館のことを語り始めた。モランディの名が出たので、思わず、ボローニャで二度も見たあのモランディ美術館のことを話しつつ、ミラノにも作品が沢山展示されていることがわかって、胸がはずみ会話がもりあがってきた。
そこにトーストサンドが運ばれてくる。こういう気分のときにかぶりつくのは、と思ったが、大きめのトーストを斜めに二つ切りにしてあったので、片方をよろしければ食べていただけません?とすすめると彼はうれしそうに受け取り、二人でバリバリかじりながら、またフォンタナや、キリコなどの話にまで及んだ。そのディスプレイがいかにすぐれているか、身終わって次の展示の場所に向うと大窓にドゥオーモとパラッツオ・レアーレが映し出されて目をうばわれるという仕掛けになっているという。まるで目に見えるような描写力に感動しながら、このあとすぐ行ってみます、とこちらから席を立つ。別れ際にくれた名刺からスイスでアートの鑑定の仕事をしているひとだということがわかった。005


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パラッツオ・レアーレの隣り、パラッツオ・デル・アレンガリオの二十世紀美術館、階段ではなく、螺旋にめぐらされた通路をたどるようになっていて、いまさっき耳にした解説、描写そのものの作品と窓の風景があらわれるのに、胸の奥底からjoy of recognitionの喜びがわきあがるのを感じた。
もうマリア像や、フレスコ画は十分、今回一番見たかったのはミラノの近代から現代の作品だったのだが、その希望が思わぬ出会いから叶ったのである。

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コメント

なんと素晴らしい出会いでしょう。
というのも、交流できる言語を持っている人にできることです。
日付をまたぎ興奮しながら読みました。

20世紀美術にもお詳しいのですね。
同じ作品に共感できる幸せなひと時でしたね。
一日分が密度が濃くて何日分にも相当しますね。

画集を見ても、ミラノのビビッドな感じが伝わってきました。
フィレンツェやローマにはない感じです(ほんの少しの経験ですが)。
トーストサンドのくだりでは思わず笑い出してしまいました。
本当に楽しんでますね~!!
風邪は大丈夫のようでしたね。よかった!

チャグママさま
ご感想ありがとうございます。
風邪をひいたあとで出かけて幸いでした。アムスもミラノも咳をしてる人ばかりで…向こうのひとはマスクをしませんからね。免疫なしでいったら、絶対うつってたと思います。

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