『ホフマン物語』賛
オペラの名曲数あれど、わたしの心を限りなくときめかせてくれるのは、ただ一つオッフェンバックの『ホフマン物語』である。
妖気とも怪奇ともいえるストーリーの面白さ、登場人物の多彩さ、一度聴いたら忘れられないほどの美しいアリアの数の多さ、ほかのどのオペラ作品にも優る特徴が多々ある。
オッフェンバックは一幕もののオペレッタで生計をたてていたというが、その経験が見事に生きて、このオペラの幕ごとの盛り上がりは満足この上ない。
人生の最後に挑んだ本格オペラ作品、それが舞台で上演されるのを夢描いていたが、叶わず、病の床に臥しながらも作曲し続けたのに、完成を見ずして死んでしまった。
それだけにラストの一幕は種々の解釈で加筆され、それが上演される舞台ごとの特徴となる楽しみにもなっている。
ヴェルディ、ロッシーニ、プッチーニ、モーツアルト、多くのオペラ作品を残している恵まれた人たちの作品より、たった一つの作品を精魂込めて書き上げようとして叶わなかったこのオペラにはどの場面にも作者の入魂の思いがただよっているようで、心惹かれるのだ。
オペラ情報誌のページをめくっていたら、なんと一月にスカラ座がこのオペラを上演するという記事が目にとびこんできた。四年か五年に一度のこの舞台、わたしの残りの人生の最後のチャンスだと思った。
来年は金婚式。結婚を無事五十年つとめあげたプレゼントだと思って,行かせて。
夫に頼んで最後の一人旅の許可を得、ネットでチケットを購入した。
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すてきなチケットをゲットできてよかったですねえ!きっと最高の旅になるでしょう。
ばぁばさんはマメにブログを更新してらして、いつも楽しませていただいています。
私は40代女性です。毎回、読ませていただく度に勉強になります。行動力のある人生の先輩に感謝です。
投稿: chiko | 2011年12月 1日 (木) 17時51分
chikoさま
励ましていただき、書き続ける張り合いをいただいたような気がしております。
こちらこそ、感謝です。
投稿: cannella | 2011年12月 1日 (木) 22時57分
12月ブログを全部読ませてもらいました。
「ホフマン物語」という今度の旅行の前奏曲があったのですね。
ずっと読み進みながら、時には吹き出したり本当に楽しく読ませてもらいました。
一と月分にギュッとエキスが詰まっているような・・・。
文章の無駄がなく、表現もうまいし、人の心をつかむ書き方を考えさせられました。
経験の量と質もやはり違うのですね・・・。
偶然にこのブログを発見して本当によかったと思っています。
投稿: チャグママ | 2012年2月 7日 (火) 00時11分
チャグママさん
あなたという読者を得たことを感謝します。
あなたのブログも素晴らしいですよ。長い文もよく書かれますね。お若いからかも。
投稿: cannella | 2012年2月 7日 (火) 11時44分