ディザスター!
期待していた青柳いづみ子さんのコンサート、第一曲目にdisaster(失態)が起きた。
彼女のソロ、『愛の夢』。出だしは好調でメロディがよくひびき、さすがだな、と思われたのだが、中ほどの聴かせどころ、走る部分で完全に指のもつれが出てしまったのだ。それでもヴァーンと弾ききってしまえばよかったのに、なんと、「ごめんなさい」と一言、とまってしまって、その部分から弾きなおしをされたのである。
音楽の友ホールはまるで学校の講堂を小さくしたような場所、傾斜がなく、舞台が一段と高くなっているだけなので、わたしたちは一番前に席をとっていた。
それが起きたときはこちらが悪いことをしてしまったように下を向いてしばらく顔があげられなかった。
わたしがピアノを習っていたとき、教師にきつく言われたことがある。まちがえてもいいけど、弾きなおしだけはしちゃだめよ、と。
ああ、プロでもこういうことがあるんだ、衝撃を受けた。
プログラムはそれでも順調に進み、語りもよく、『うたうリスト』はまさしくリストが秘めている心に響くような歌曲の紹介を立派に果たしていた。
カウンターテナーの村松くん、若々しく清潔感があり、歌う表情が美しく、いずみ子さんの審美眼がうなずけた。
そして次なる彼女のソロの番になると、マイクを持たれて、このところリハーサルでは完璧に弾けているのに、本番ではこういうことが起きるという現象に悩んでいる、という正直な告白をされて、好感が持てたのだが、それでも今度はちゃんと弾けるのかしら、と、ご本人より緊張してしまった。
いくつも受賞されている著書を出版され、才女ぶり著しい彼女ではあるが、執筆もし、大学で教鞭もとり、こういうコンサートを企画、しかも伴奏、独奏すべてをこなすのはちょっと無理だったのではないか、などと思った。
『愛の夢』は難曲である。しかもよく知られているだけに手強い。歌曲を編曲したものの中でもっと楽に弾けるものを選ばれたらよかったのに。
どしゃぶりの雨の日、お天気も体調に災いしたのかも知れない。
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