『おひさま』終わる
一日はこのドラマから始まると言っていいほど、毎日欠かさず見ていた。
7時に目覚め、7時半のBS第一回をまず見るのである。
ミラノに旅行をしていたので、初回は見逃してしまったのだが、ネットで検索すると<若尾文子と斎藤由貴の出会いで始まる、あの暑苦しい初回はなしでも良かったのではないか…>などという意見もある。意外であった。
ずっと続けて見る気になったのは安曇野が舞台だと知ってからだ。
かつて、疲れたOLの癒しの場所という『穂高養生園』という場所に出かけていたことがあった。OLではなかったが、翻訳という仕事に疲れていて、清らかな自然と澄んだ空気でいっぱいの安曇野は癒しの場所だったのだ。
このドラマの見せ場は戦前、戦中、戦後の庶民の暮らしにある。教室の場面、食料事情、親子のやりとり、すべて、身をもって経験した私自身、そう、あの通りだったと思えるほど、胸に迫る映像で語られていた。それはまた、大震災の被災の生活に類似していたから、これまでになく、大きな認識感を形作ったと思う。
ヒロインの井上真央さんは表情ゆたかに好演していた。善意や思いやりが顔いっぱいにあふれるので、高齢となった役を演じる若尾さんはちょっとミスキャストではないかと思った。78歳にしては驚くほどの美貌を維持していて、着物姿も美しいのだが、なんとなく冷たい感じがするのである。
最終回に近づくにつれて、ちょっと雑なつくりだな、と思ったりしたが、ネットの感想のなかにも同感のひとを数人見つけた。白紙同盟の三人の笑い声で数分がたつというような場面、出演者の演技に支えられてはいるが、もっといいせりふのやりとりが聞きたかった。
登場人物のそれぞれがドラマの主人公になれそうなほど、多彩なので、半年でまとめるのはさぞむずかしかっただろうと想像する。
それにしても、心に太陽を持て、というツェーザル・フライシュレンの詩は美しい。
山本有三の名訳あってこそ、でもあるが、これを、教室で唱和するような授業を現在も受けられるのなら、いじめも減るのではないか、と思ったりもした。
心に太陽を持て、唇にうたを持て、はせいぜい六十代まで、現在のわたしは心を平穏に保て、がやっとである。
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