高齢者の新築
高齢者が家を新築するのは稀有な例らしい。
昨年、いよいよプランニングをするというときになって、書店にでかけたが、リフォームや老人ホームの見つけ方の本は沢山あるのに、新築プランの本は一冊もなかった。
なにか途方もないことを始めるような気がして、心がはずまなくなった。
三十坪ぎりぎりに建てる総二階の家の間取りは工夫のこらしようもなく、それぞれがくつろげる個室に重点をおき、リビングルームはあきらめて、ダイニングキッチンだけにする。
ドアの形、窓の種類、床材、システムキッチン、浴室のあれこれ、あまりにも多くの選択と決断に迷いがつきまとい、ストレス過多になる。
いいものを選びたいが、統一的な構想が必要、センスがよくて、主婦経験の長いひとにアドヴァイザイーになってもらうことにした。
六十を過ぎてインテリアデザイナーになったHさん。
国際婦人クラブで知り合ってから、三十年余の付き合い、現在75歳、ご主人と伯母様の介護をしながらのキャリア。
あなたをますます大変にしちゃうかも、と言ったら、これがいまのわたしの生きがい、この仕事をしているときが一番幸せなの、と応えてくれた。
完成した家の一番の自慢は階段である。
普通二階の階段は13段だが、我が家は17段、段の高さ、<けあげ>を二センチ低くしたため、上り下りが実に楽。
夫が何度もつぶやく、この階段はほんと、よかった、と。
壁紙や建具、照明器具など、かなり彼女にお任せしたのだが、それも正解だった。
まだ十箱ほど残っている引越し荷物、箱の中身はアルバム、情報書類と本、こんどこそ徹底的に断捨離できそう、なにせ入れる場所がない事が明白になったのだから。
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