児玉清さんの急逝
朝のワイドショーはいずれもこのニュースをトップで扱っていた。
あのどろどろした芸能界で77歳にして、めったにない知性派のスターとしての存在を不動にしていた児玉さんは立派だったと思う。
友人のK子は見ていただろうか。
私たちが大学生だったころ、児玉さんはK子のボーイフレンドだった。
仲良し三人組が卒業旅行に軽井沢に出かけたとき、彼は上野駅まで見送りに来た。
薄いブルーのシャツに黒いセーターを羽織り、あらわれた彼はほれぼれするほどの美青年で、うらやましいな、と思ったものだ。
二人のロマンスは実らなかったが、彼が木村功のような俳優になりたい、と言ったというのを聞いた。
五十数年たった今、児玉さんはその目標以上のものを達成したのではないだろうか。
三十数年つとめたクイズ番組の司会が有名だったが、わたしはNHKの週間ブックレビューのレギュラー司会役の彼に注目していた。
最初は気負いが目立つ司会ぶりだったが、のちに彼独自の話術で楽しめる番組にした。
大作家と対等に会話し、「おっしゃる通りだなあ」などと、彼ならではのモノローグなどをちりばめつつ、読書家ぶりを十分に示した。
司会役は毎回数冊の本を読破し、登場するゲストの下調べも念入りにしなければならない。
勉強家で知的な興味の旺盛な人であるからこそ、本物の知性をただよわせられたのだ。
老醜をまったく、感じさせない長身で、痩身の彼だったが、最近はやした口ひげだけは、なぜか似合わなかった。
死期を悟ったあとのやつれを隠すためだったのではないか、と、推察しつつ、胸が沈んだ。
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私もかなりショックです。芸能人などの死去でこんな気持ちになったことは
久しくありませんでした。
それにしてもcannellaさんが若き日の児玉さんに会っていたとは!うらやましい。
テレビで彼が30~40代の映像もたくさん流れていましたが、若いときも素敵
でしたが、晩年はもっと奥行きが出て、若いときより素敵に見えました。
本当に日本でこんな俳優さんは珍しいと思いました。長身で肩幅があってスーツでも
セーターでも作務衣でも格好よく着こなしていましたからよけいそう思いますね。
本の数だけ人生がある、っておっしゃってましたよね。そして本を読んで自分が
主人公になればまたその人生を体感出来るってことでしょうか。
豊かに年を重ねるには良い本との出会いは欠かせないことを教えてくれました。
10年ちょっと前にお嬢さんを亡くし、悲しみのどん底に突き落とされていたのに、
心に悲しみを抱えていながらそれを感じさせない人間としての強さ、それは
周りへの気遣いへもつながったのだと思います。
美しく生きた児玉清さんのご冥福を祈ります。寂しい!
投稿: へこたん | 2011年5月19日 (木) 12時25分
へこたんさん
あなたのような方がフアンで児玉さんもお幸せだったと思います。
いわゆる芸能事務所に所属しないで過ごされた方だったようですね。それだけに別のご苦労もあったかもしれません。近頃の芸能界はお笑い中心みたいで、それだけに児玉さんの急逝は惜しまれますね。
投稿: cannella | 2011年5月19日 (木) 15時09分