イタリア映画祭2011
この数年、ゴールデンウイークはイタリア映画祭に日参すると決めていて、今年も迷わず、一ヶ月まえから、四作品を選び、前売り券を買い、手作りのお弁当までつくって、いそいそ出かけたのだ。
それなのに、連日失望して、物足りなさをかかえながら戻った。
『ロバの美』は一人娘のボーイフレンドが祖父ぐらいの70代の老人だという事実に、両親があわてるという喜劇なのだが、裕福な中年夫婦の家庭環境も親子関係も説明不足で流れがよくないので、ふざけ過剰ばかりが目だって、ちっともおかしくないし、ストーリーの中に入っていけない。
『最後のキス』はイタリア国内の大ヒット作品だということだが、主人公と親友たちの恋愛模様が絶妙に織り交ぜられながら、語られるという宣伝なのに、実際見た印象は絶妙どころか珍妙で、赤ん坊が生まれてイクメンになりきれない父親がなぜ顔にピアスをするのか、友人たちとバンジージャンプに興じるのか、これも騒々しく、興ざめで話にのりにくく、なぜそれほどヒットしたのかよくわからない。
それなら、いっそ史劇に期待しようと、二時間半のイタリア統一の歴史劇『われわれは信じていた』を見たが、肝心の指導者マッツイー二やガリヴァルディがしっかり描かれていないので、徒労に終わった青年たちの悲劇だけが強調されて、後味悪く胸にくいこむ。
そして今日見た『穏やかな暮らし』、これこそイタリア映画が得意とする家庭劇かと思ったら、黒い過去を引きづっている主人公が再び殺人をおかし、それでも穏やかな暮らしを求めて、逃亡生活を続けるという、これまた暗澹たるドラマ。
ほかの作品を見たという友人たちも一様に失望したと語っていた。
ヴェロッキオ、コメンチーニ、ジョルダーノ等、名監督はもう引退なのか、イタリアのかかえている現実の問題があまりにも複雑で整理しきれないのか、それともよい作品もあるのに、主催者の作品選択が誤っているのか、達成感の乏しい、疑問の残る映画祭であった。
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