2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
フォト
無料ブログはココログ

« 山口晃展 | トップページ | 『ソーシャルネットワーク』を観る »

2011年1月17日 (月)

高峰秀子さんの偉業

去年の大晦日に訃報が伝えられてから、新聞、雑誌に特集記事が載っているが、それはもっぱら大女優だった半生を語るものばかりだ。

彼女の人間としての素晴らしさは引退後に開花したのだと、わたしは思う。
84歳のとき、友人に出した手紙に<老衰でよれよれだけど、台所仕事やってます>とあったそうだ。

12年まえに出版された『にんげんのおへそ』という著書を読むと、その、たぐい稀な生活者としての姿が浮かび上がる。
夫君の松山善三氏はかなりの偏食があったという。漬物も梅干も味噌汁も嫌いで、市販の弁当が食べられない。彼女は朝五時起きして新幹線に乗る夫のために、二段重ねのお弁当をつくる。
最後の仕上げはグリンピースの炊き込みご飯に醤油煮の実山椒をパラリ。その具体的なおかずメニューに、わたしは感動した。
並みの料理人では浮かばないセンスの良さである。

松山氏はまた病気や怪我のオンパレードでその看病もハンパじゃなかった。
そういう場合の食事、雑炊メニューがまた、圧巻。
もずく雑炊、牡蠣雑炊、手順から薬味まで非の打ち所なし。

エッセイの文章がまた素晴らしい。リズム、歯切れのよさ、テーマの展開、そしてオチの見事さ、しかもそのテーマが五十数年間、最高の演技者として極めた道で出会った、極上の人物との交流のこと、そういう境遇でありながら、市井の人々にも優しい、深いまなざしが注がれている。

女優生活では「高峰秀子」というスクリーンの虚像につきあっていただけで…ようやく「自分らしい」ものになったのは二十年まえ…という文を読み、彼女が主演した成瀬巳喜男監督の作品全てを見ているだけに、その気持を理解することができた。

七十代で書かれたエッセイの出だしが<日に日に体力の衰えを感じる>今のわたしを言い表しているような高峰文。当分読書にふける楽しみができた。

『にんげんのおへそ』は、装丁,装画が彼女の崇拝者でもあった安野光雅画伯、ぜいたくな一冊である。

« 山口晃展 | トップページ | 『ソーシャルネットワーク』を観る »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/565431/50611889

この記事へのトラックバック一覧です: 高峰秀子さんの偉業:

« 山口晃展 | トップページ | 『ソーシャルネットワーク』を観る »